気胸〜2週目〜

・2010/5/31(月)
・2010/6/1(火)
・2010/6/2(水)
特にイベントも無いので3日分一気に。
日曜辺りから痛みも特にない、けど空気の漏れも止まらない状態になりました。
暇つぶしの雑誌、イラストロジック等を使って時間をつぶす、
ようやく自分の思っていた「入院患者」の生活を味わっている気がします。この暇さがいいね。
仕事の目処(自分のやるはずだった仕事がどう回るか)も立ったので、安心して入院生活を送れます。
ただ、全く回復する気が無いこの漏れについてはどうしたものかといった状態。
毎日3回ぐらい担当の先生がやってきて診察してくれるのですが、特に変わりなくなんか申し訳ない。
恐らく治ってほしいという自分の気持ちからなのか、ちょっとだけ良くなっている「ように見える」という
気持ち程度の改善が毎日見られていました。確かに喋っても泡が出ないことは出てきたが・・・気持ちだよね。
 
この辺りから看護士の方に「なんか噂で癒着術するかもって聞いたんだけど・・・」と聞かされました。
噂って何だよ!と思いながら癒着術だけは避けたかったので勘弁してください、と返してました。
この辺の会話からもアレですが、看護士と先生ってなんか一線を引いてるような印象を受けました。
もちろん術中とかはちゃんと連携しているのですが、どこかで疎通が取れていないような。
普段からだべっている訳にもいかない、というか医者も看護士も超忙しいのでそれどころじゃないのですが
そこら辺ちょっと違和感を覚えました。大病院ならではなのかもしれませんね。
 
因みにこの病院、無料貸し出しの図書室みたいなものがあるようで、
折角だから読んでみようと思い行ってみたのですがさすが病院の図書室、
医療関係多すぎ。病棟で医療関係の本読むって逆に不安になったりしないのかしら。
何か自分好みのものでもないかなーと思ってたところ三国志関連の本があったので借りてみました。
・・・やっぱり自分は活字は苦手だ、と言うことにしておこう。なんか内容が微妙でした。
それ以外にも売店で雑誌買いまくってたので退院したら寄贈しようかなと思ったけど
健全な病棟にヤンジャンとか置いても困るかしら。つか売店もそんなの置いていいのかと思うけど。
パチマガとか週間大衆とかその辺患者が変な気起こさないかとちょっとだけ心配になりました。
ほら、中毒症状って、でる、じゃん?(エア鬼武者を打ちながら)
 
・2010/6/3(木)
どうもこの病院は1週間、と言うのを一つの区切りとしているようで、
前回、つまり胸腔鏡手術から1週間たった結果とくに改善が見られないと言うことで
次のステップ、胸膜癒着術という処置を行うことになりました。
看護士が言っていた「噂」は実は本当だったってことですね。
ここまで来るともう覚悟を決めるしかないのですが怖いものは怖い。
普段暇をつぶすときのアイテムとして携帯でネットサーフィンはもはや必須だったわけですが
癒着術についての感想とか評価とかを並べると

本気で死にそうな思いを初めて体験しました。
どこの気胸サイトを回っても、
「胸膜癒着術は激痛!」「二度とやりたくない!」「死ぬかと思った!」
…などと痛々しい記録がなされており、それを見るたびに恐怖心をあおられていました。
癒着が不十分だと再発の可能性が残る。再発時は癒着しなかった部分のみが潰れるため軽度の気胸に留まるものの、
治療に際してドレーンが挿入できなくなる事がある。また手術を行う時は、癒着を剥がす必要があるために
癒着のない場合より困難を来し、多くは開胸を要する。

などなど、痛い上に癒着でべったりくっつくからもし再発した場合開胸手術確定と、
メリット以上にデメリットが目立ちまくる嫌な手術だったりします。
実際先生のほうもコレに関しては乗り気ではなく
「若い人には余り勧めたくない手術なんだけどねぇ・・・」としぶしぶやるような雰囲気でした。
 
ネットで調べてる人は分かると思いますがここで胸膜癒着術について簡単に説明。
 
○胸膜癒着術
・内容
肺の穴が塞がらない場合、肺自体に炎症を起こし、その膨れで穴を塞ぐと言うもの。
また、肺と外側の膜(胸膜)とを癒着させ、気胸による影響(肺のしぼみ)も起こらなくさせる
癒着によって穴を塞ぐと言う効果もある。
・方法
胸腔内に刺さっているドレーンより特殊な薬剤を注入、
肺が「やばいって!この薬やばいって!」と過剰に反応し炎症を発生させる。
・・・まあ、悪い言い方をすれば劇薬を指につけたらかぶれるような感じ。
・その他
もちろん体が過剰反応している(治そうと努力している)ため
体内の異常物質を排除しようと高熱が発生する。
そして痛い。
 
内容だけ聞くと非常にグロいですよね。肺全体に薬を塗って炎症をわざと引き起こすって・・・。
で、それをやるとのこと。
「しょうがないですね・・・わかりました、やります。で、いつやるんですか?」
「今」
「今!?」
とコントみたいな会話を交わし、さすがに心の準備が皆無なので午後まで待ってもらうことに。
感染症とかが怖いので処置とか手術とかは決まったら早めにやる方がいいんですって。
そうは言うがな大佐、さすがに患者もびっくりしちまうってもんだぜ。
 
そこまでひどい痛みはなかったのですが、緊張が高まってきていたので
昼飯は殆ど食べられず。気持ちに左右されすぎである。
 
というわけで午後、先生二人がやってきて処置開始。
 
 ――手術3・胸膜癒着術――
 今回は特別部屋の移動もなく、自分が寝ているベッドの上で処置が開始されました。
 着ている服をはだけさせ、左胸だけ出せる状態にしておきます。
 今自分に刺さっているチューブには吸い出す管の他に注入用の小さな管があり、まずはそれを消毒。
 おもむろにおもちゃの様な注射器(100ml用?針は付いてません)を取り出し、麻酔薬を投入
 あ、ここの麻酔薬はキシロカインって名前でした。受ける人は参考に。
 針の無い注射器を注入用の管に取り付け、注入開始。
 他のサイトでは「水のようなものが入っている感覚がある」と有りましたが自分は感じず。
 ただ、タフマン1本分はあろうかという液体が何の苦もなく体内に注入される様は
 みていて凄く違和感というかなんだろう良く分からない圧迫感がありました。不思議。
 その後、麻酔を満遍なく肺に付けるために5分感覚で右向き→仰向け→左向き→うつ伏せと
 体制を変えて液体を動かしました。
 1セット終了したところで本題の薬剤を投入。今回はピシバニールというものを使うそうです。
 薬剤によっては本気で激痛を伴うものもあるらしいですがこれは比較的痛くないとの事。
 同じ注射器から薬剤を注入、その後薄める?ためか生理食塩水を同じ量だけ注入。
 つまりは注射器3本分の異物が自分の体内にスルニョーっと入ったわけで
 内側から破裂するんじゃねーかみたいな不思議な恐怖がありました。説明しづらいなコレも。
 同様に体制をコロコロとかえ、1セット終わった段階で先生たちは戻ります。
 この時、注入した液体が脱気用のチューブから抜けないようにクリップで止めます。
 その後言われたとおりに5分1セットで2回自主錬を行い処置完了。この時点では痛みなし。
 
癒着術を実施したほかのサイトを見ると
「注入直後に激痛が」という物から「開始から1時間で呼吸困難に」というものまであり
発祥のタイミングが実に様々。まあ薬剤から違うようなので難しいですね。
で、その「開始から1時間で呼吸困難に」というのが同じピシバニールを使っていたので
2セット終わった段階で1時間だしそろそろかなー、と寝ながら考えていたところ
胸の先端辺りにじわっとした痛みが。確かに大きく息を吸うと痛い。コレか、コレなのか。
冒険するメリットは全く無いので痛みを感じた辺りから呼吸する量を少なめに抑えつつ
2時間くらい痛みを待ち構えつつ待機。結局のところサイトにあるような激痛は
特に感じられず(というか避けてた効果があったのかも)夜ごろには普通に飯も食べられました。
 
飯後、癒着術による二つ目の副作用「発熱」が襲ってきました。
なーんかだるいなーと思って体温を測ってみたところ38.3度。うん、普通に辛いね。
38.5度になれば解熱剤飲んでいいって言われてたんだけど・・・まあ飲んでもいいですよ、ってことで
解熱剤(といっても今までの鎮痛剤と同じ薬)を服用。
この発熱、風邪のときと同様、体の防衛作用なので、癒着をしっかり行うためには我慢する必要があるんですね。
なので出来れば薬は控えた方がいいらしいです。・・・ただ癒着に必要な熱は37.5度程度で十分とのこと。
まあ、痛いよりだるい方がいいのでこのくらいは我慢できますけどね。と就寝。

・2010/6/4(金)
朝起きて早速体温を測ると37.4度。まあまあな滑り出しであろうか。
熱があるのであまり朝飯は食べられず。とりあえずパンくらいには手をつけておこう。
体がだるいので息切れしながらレントゲン取りに行きましたが見た目余りにも病人過ぎる。
ブラウス的な服がはだけ気味になるとこれまた病的度合いが増しますね。
 
レントゲン前に先生が来て昨日止めておいたクリップを外します。
昨日入れた薬剤が若干黄色?赤色?に染まってどろどろーっと出てきました。やっぱ無理してたんじゃん。
心持からだが軽くなった気がしましたが気のせいでしょう。つかこれ以上軽くなってどうすんだ。
 
体温も8度弱程度で収まっておりインフルエンザを経験した俺にはこの程度どうって事無いと
余裕でベッドに横たわっていたところ熱ではなく痛みが襲ってきました。それも胸じゃないところから。
痛みの箇所は脇腹と肩。肩の方は感じた事無いけど重度の肩こりにかかってるような筋肉的苦痛、
脇腹はコレが盲腸というものか・・・?と言った内側から来る痛みでした。
息をして横隔膜が動くだけで脇腹が痛み、ちょっと体制を変えると肩に来る、いかん、デッドロック
安全地帯が無い痛みは時間がたてばたてばたつほど精神的に辛く、1時間あまりで耐えられずにナースコール。
当時、鎮痛剤は手持ちで持ってなかったので急いで用意してもらい、
本来飲む時間ではないのですがんなこと言ってられないのでさっさと服用。
薬が効き出すまでの30分間が痛いこと痛いこと。せめて肩だけでもとセルフ肩もみしましたが効果なし。
別に肩こってるわけじゃないもんなあ。なんだろこれ
 
ようやく薬が効き始め、常時痛みを感じることはなくなった辺りで回診。
肩と脇腹が痛かったんですがコレなんですか、と効くと「癒着が起こっている箇所の反応ですね」と。
肩の辺り(肺尖部)は一番重要なポイントなので特に気をつけて薬剤を塗っていたわけですが
それによる癒着反応で肩の神経が刺激されている模様。同様に脇腹、っつーか横隔膜付近も
同様に刺激されちゃってるわけですね。体の内側って結構めんどくさいなあ。
痛み止めの効果時間は4〜6時間、それが切れるとまた痛くなってきたのでほんの少し飯を食べ
食後に服用。本来は解熱剤としての薬なのですが主に鎮痛剤として使ってました。痛いんだもの
おかげで熱は37.0度程度まで下がってしまったので余りよろしくない事態。炎症起こしたいんだけどな。
 
・2010/6/5(土)
朝一の体温は37.3度程度。相変わらず微熱状態が続く・・・。
しかし処置の効果が的確に現れ、機器から泡が出なくなったのは喜ばしい。ようやく効果らしい効果が出ました。
胸腔鏡手術後って外目には術前と変わりませんでしたからね・・・。
 
飯後、肩と脇腹にまたも痛みがありましたが昨日ほどではなかったのでこの時点では無視。
ただ寝ていると普段とはまた違った違和感が。調子悪いと感じたときは大抵熱を出してるもの、
ということで測ってみるとその数39.3度。うえぇ!?
数値に体調が左右される子供みたいな自分は余計きつく感じちゃったわけで、
こりゃまずいんだろうととりあえず鎮痛剤を服用。今度は解熱効果を期待しちゃうね。
しかしインフルエンザで慣れたとはいえ9度台の熱でも耐えられるようになったか・・・と
ひとり良く分からない満足感に浸っていました、や、辛いのは辛いのよ?
解熱剤が効いてきたかなーという時間に測りなおしてみると38.2度まで落ちてました
つかそれだけしか落ちないのか、という実感。他の日も飲みましたがジャスト1度落とす程度。
本格的に辛かったら座薬や筋肉注射が効果的らしいです。筋肉注射はガチなのはしってる
 
発熱状態が続いていましたが、先生がやってきて「経過がいいので管を抜きましょう」と。
おかまいなしか!と思いつつやれなくは無いので先生に従うことに。
例によってベッドなどの移動は無く今寝ているところに先生と看護士が集まります。
刺さっている部分の消毒を済ませて、言われるままに深呼吸。2回目で抜きますとの事。
「吸ってー、吐いてー、吸ってーー、吐いてーふーーー」
ぐぐぐぐぐっ、という感覚とともに管が抜けていきます。
体勢上抜ける瞬間は見られなかったのが残念。注射とかって割と見たいんですよね、自分。
その後ひと針だけ縫って終了。終わったら記念に管の写真撮らせてくださいね、とお願いし
ようやく自分の体内に居たオプションとご対面・・・・・長っ
思って退場に太くて・・・長いです・・・。ゆうに20cmは有ろうかという長さでびっくり。
こんなのが心臓辺りから自分に刺さってたのか・・・と今更ながらビビっちゃいました。
そしてようやくオプションから切り離され自由の身に。まだ熱でてるけど。
 
この日は1日中8度以上の高熱に悩まされることになりました。
熱自体はまあ辛いけど耐えられるのですが
熱が出る→汗が出る→汗がしみこむ→濡れるというこの展開が実に精神に来る。
昨日一昨日辺りから常に発熱状態だったわけで寝てるだけで汗ダラダラなんですね。
着替えも大して用意してるわけでもなく、シーツの交換は週に1度。
つうわけで服もベッドもびしょびしょで非常に辛い。言えば変えてくれたかもしれないけど
まあルールはルールだしということで乾いた部分に体を移動させて忍んでました。
濡れてるのと汗臭いのと熱っぽいのとまじってもうやだもう
 
・2010/6/6(日)
術後の経過が順調で、レントゲンも問題なし、チューブも抜けたということで
ようやく退院の目処が立ちました。「明日か明後日かどちらがいい?」「明日で」
ということでやっとここからおさらばです。
その後親から電話がかかってきて
「明日辺り見舞いに移行と思うんだけど」
「ああ、明日退院だから別にいいよ?」
「ええ!?」
みたいな話をしつつ、退院ならむしろ必要じゃねーかということで来てもらいました。
熱はまだ37度強ありますが薬は飲まないようにして今日は耐えるつもり。
 
退院前なので身辺整理、主に見舞いで頂いた食料の消化をしてました。
入院に果物はつきものですがいやーこれいいですよ。食欲をそそられる食べ物っていいですね。
チェリー、スイカと頂いたときはスロッターとしてちょっとうれしい気分になりました。
実際にもこんなに出てくれればいいのに・・・。
 
就寝前に脇腹がまたも痛くなってきたので熱はいいけど痛みはダメってことで薬を服用。
寝る前にコレ飲むとサクっと寝れるのがうれしいですね。
明日からまた生活リズムを元に戻さなきゃならんのか・・・というのが気がかりと思いつつ
あっさりと6時起床。けど起床リズムだけはすぐに戻せそうな気がする。多分。
 
・2010/6/7(月)
退院日。
久しぶりに外用の服を着てカバンの中に必要なものを全て押し込み準備完了。
親が来るのが遅かったため色々と病棟内を散策。
因みにこのフロア、外科+内科+消化器科フロアであり、
4階あたりに小児科フロアがあります。さすがに自分を小児とよぶ気は無いですが
何歳までがこのフロアなんだろう、と疑問に思いました。
さすがに27にもなって「あなたみたいな若い方には〜」といわれるのはちょっと。
 
親到着。各所に挨拶を済ませていざ退院。
相変わらず病院の会計は手間取るのでこまる。20分くらい平気で待たせるよねこれ。
額面を確認・・・たけーマジたけー。あらかじめ知っていたとしてもこの費用はさすがに辛い。
具体的には伏せますがいきなりこんな額払えと言われても無理な人が居ると思うレベル。
一番驚いたのがカード不可。さすがに手持ちでそんな額持ってなかったので
親に引き出してもらったのですが何かすごいですね。金持ちに見えちゃう。
高額医療保障とかそういうのがあるのですが返ってくるのが9月なのでそれまでは
霞食って・・・いけるか!ボーナス使うわ!ってことでボーナス額を支払い、
残りは親と折半。マジ申し訳ないです。
その後とりあえず退院祝いと言うことで100円寿司で食事。大して食えなかったけどありがたい。
快気祝いを買って終了。いやー・・・長かったー・・・。
 
 
 
 
とまあこの辺でひと段落。正直退院日も8度以上の熱が出たり
エウレカにぶっこんで入院費用上乗せたりしましたけどそれは割愛と言うことで。
 
ともあれ気胸、これから罹る人の参考になれば幸いです。
結構気胸の人の記事は見つかったりするのですが時期が古い(〜2006くらいの)物が多いので
昔と今との違いを比べて見たりすると良いと思います。特に癒着の薬とかね。